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早田ひな、後輩・赤江夏星に0-3敗退|アジア選手権選考会で語った「ここで逃げては意味がない」
2026年5月のアジア選手権国内選考会で、早田ひなが同門後輩・赤江夏星に0-3で準決勝敗退。世界卓球決勝からわずか2週間で迎えた一戦と、涙の中で語った「ここで逃げては意味がない」という言葉、10月の代表入りの可能性まで、観戦者目線で追いました。
みはる · 2026年5月29日
所沢で何が起きたのか
2026年5月27日、所沢市民体育館で行われた卓球アジア選手権の国内選考会で、早田ひな選手(25・日本生命)が準決勝敗退しました。相手は同じ日本生命の後輩、赤江夏星選手(21)。スコアは0-3のストレートでした。
配信を観ていて、正直「えっ」と声が出ました。パリ五輪で銅メダルを獲った、あの早田選手が日本国内の選考会の準決勝で止まる。しかも勝ったのは同じチームの後輩。ニュースの見出しだけ追っている人にも、この一報は強い驚きだったと思います。
しかも今大会は、2026年10月のアジア卓球選手権の代表選考と、2027年世界卓球選手権(個人戦)アジア大陸予選会の日本代表選考を兼ねる選考会でした(公益財団法人 日本卓球協会 2026年アジア卓球選手権大会日本代表選手選考要項 PDFによる)。早田選手にとっては、5月上旬に終わったばかりの世界卓球ロンドン大会団体決勝からわずか2週間で迎えた一戦でもありました。世界ランク10位という現在地を考えれば代表入りの可能性自体は十分に残っていますが、それでも本人にとっては「ここで負けるわけにはいかない」舞台だったはずです。
数字だけ追えば0-3のストレート負けですが、観ていてずっと引っかかっていた違和感があります。
準決勝、0-3というスコアの中身
ゲームスコアは早田選手から見て9-11、8-11、7-11でした(日刊スポーツ/Yahoo!ニュースの試合速報による)。数字だけ見ると一方的に見えますが、各ゲームの最後まではかなり競っていて、画面の前ではどのゲームも「ここから差せるんじゃないか」と思いながら観ていました。
ただ、得意なはずのフォアハンドが普段ほど突き刺さらない。私の素人目には、ボールを置きにいっているように見える瞬間があって、いつもの「ここぞで一発で振り抜く早田選手」とは少し違う印象でした。技術的にどうこうは詳しい方が見れば違うのかもしれませんが、観ていた側の体感としてはそうでした。
第3ゲームは序盤に4連続失点があって早田選手側がタイムアウトを取った、と日刊スポーツ/Yahoo!ニュースが書いています。そこから一度持ち直して7点まで詰め寄ったのは、やっぱりこの人の意地だなと思いました。それでも、最後のひと押しが届かない試合でした。
世界卓球決勝からの2週間
この試合を語るうえで、5月上旬に終わったばかりの世界卓球ロンドン大会のことを外せません。日本女子団体は決勝で中国に2-3、2014年東京大会から6大会連続の銀メダル、1971年名古屋大会以来55年ぶりの金メダルがかかった一戦でした(Olympics.com 日本語版)。早田選手はその決勝で孫穎莎選手に0-3、王曼昱選手にも0-3と、2点を落としています。
あの2試合をリアルタイムで観ていた時、特に王曼昱戦の中盤あたりから、画面のこちら側でも息が浅くなっていく感覚があったのを覚えています。私には技術的に何が起きているのかまでは分かりませんでしたが、ラリーが長く続いた末に取り切れない場面が積み重なっていくのを、ただ祈るように観ていました。
選考会2日目の26日、予選リーグを戦った試合後に、早田選手は「決勝での2点負けは卓球人生の中でも引きずっている」「自分でもここまで追い込まれたことはない」と涙ながらに語っていました。そして翌27日の準決勝敗退後にも再び涙を見せ、選考会で2日連続で涙を流したと日刊スポーツ/Yahoo!ニュースが書いています。
つまり今回の選考会は、世界選手権決勝から2週間しか経っていない状態で、本人が「追い詰められた」と口に出している状況で迎えた一戦でした。0-3という結果だけを切り取って語るには、背負っていたものが大きすぎたと私は思っています。
赤江夏星という選手
早田選手を止めた赤江夏星選手とは、いったいどんな選手なのか。配信の選手名テロップを見て「あれ、この選手どんな経歴だっけ」と検索した方も多いはずです。私もそうでした。
同じ日本生命の先輩と後輩が国内選考会の準決勝でいきなり当たる、というだけで、配信のチャット欄もどこか落ち着かない空気でした。調べてみたら、こんな選手でした(Rallys 選手プロフィールによる)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 2004年7月3日(21歳) |
| 出身 | 兵庫県神戸市 |
| 経歴 | 香ヶ丘リベルテ高校 → デンソー → 日本生命 |
| Tリーグ | 日本生命レッドエルフ |
| 主な戦績 | 2022年インターハイ女子シングルス優勝 |
| 世界ランク | 42位(2026年4月時点)/自己最高39位(2026年1月) |
画面越しに観ていて印象に残ったのは、赤江選手のバックがコースを散らしながら深いところに入っていたことです。早田選手のフォアがいつもより置きにいくように見えた背景には、相手のボールの伸びもあったのかもしれません(素人目ですが)。
インターハイで頂点を獲って実業団の名門デンソーに進み、その後日本生命に移って、いまは同じチームに早田選手がいる。後輩と先輩というより、毎日同じ練習場にいる仲間に近い間柄のはずです。その後輩に国際大会の代表をかけた選考会で止められたという構図は、観ている側にもひりひりと伝わってきました。
「ここで逃げては意味がない」という言葉
試合直後の早田選手の言葉が、私はずっと頭から離れません。「いつも通りにできないから負けた」「うまくいかない時はこうなるんだ、と受け入れられただけでも、今大会は成長かなと思います」、そして、「ここで逃げては意味がない」(日刊スポーツ/Yahoo!ニュースの試合後インタビューより)。
ここで逃げては意味がない
なお、同じ発言は記事の見出しでは「ここで逃げては意味ない」と「が」を省いた形で表記されていますが、記事本文中では「ここで逃げては意味がない」と繰り返したと書かれており、ここでは本文表記に揃えて引用しています。
このひと言を聞いた瞬間、私は思わず姿勢を正してしまいました。涙で声が震えているのに、言葉だけはまっすぐ前を向いている。選考会2日間で2日連続涙を流したと書かれている人の口から出るとは思えないほど、強い言葉でした。
強い選手だな、と簡単に書いて終わりにしたくないです。揺れていて、傷ついていて、それでも逃げないと自分に言い聞かせている人の言葉として、私はこれを受け止めました。応援している側として、軽い言葉では返せません。
10月のアジア選手権、代表入りの可能性
それで、肝心の代表入りの話です。10月19日〜25日にウズベキスタン・タシュケント(一部報道ではタシケント表記)で開催される2026年アジア卓球選手権(Olympics.com 日本語版)の代表枠は、男女各最大5名で、内訳は次のようになっています(公益財団法人 日本卓球協会 2026年アジア卓球選手権大会日本代表選手選考要項 PDFによる)。
- ①世界ランキング日本人上位3名
- ②国内選考会の優勝者
- ③2026年全日本選手権一般の部シングルス優勝者(女子は張本美和選手)
- ④重複した場合は①を除く世界ランキング日本人上位順で繰り上げ
早田選手はこの選考会で4強敗退ですが、世界卓球終了後の国際卓球連盟 世界ランキング 2026年第20週時点で女子シングルス10位という現在地があります(同大会前の第19週時点では11位、決勝の舞台に立った直後に1つ上昇しています)。日本人選手の中では引き続き上位に位置しているので、世界ランキング枠で代表入りする可能性は十分にあります。むしろ、ここで落ちることのほうが考えにくい立ち位置です。
ただ、応援している側としては、世界ランク枠でぎりぎり滑り込む形より、本人がもう一度自分の卓球で代表をねじ込んでくる姿を観たい気持ちのほうが強いです。安心できる立ち位置にいるはずなのに、観戦者の気持ちはなかなか落ち着きません。
選考会の決勝は、長崎美柚選手(23・木下グループ)が赤江選手を3-2(11-4、17-19、13-11、8-11、11-8)で振り切って優勝し、10月のアジア選手権と2027年世界卓球選手権(個人戦)アジア大陸予選会の両方への代表内定を選考会枠で同時に決めました(Olympics.com 日本語版)。早田選手を倒した赤江選手が、決勝の終盤までフルゲームで競った末に届かなかった。あの試合を勝ち切った長崎選手も含めて、日本女子の層の厚さを思い知らされた2日間でした。
次は6月、WTTコンテンダー・ザグレブへ
早田選手の次戦は、6月9日に開幕するWTTコンテンダー・ザグレブです(WTT 公式大会ページ)。世界選手権、選考会と続いた重い2週間の直後にまた海外大会、というのは観ている側からするとなかなかにきついスケジュールです。
それでも、本人が「ここで逃げては意味がない」と繰り返した以上、次の試合は出てくると思います。私はそれを観に行くつもりです。勝った負けたよりも、いつもの早田選手のフォアが画面の向こうで気持ちよく抜けていく姿を、もう一度観たいです。
落ち着いて、次のラリーで深く息を吐いて、自分の卓球を取り戻していく。応援している一人として、それを待っています。